小説の良書を紹介する。『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』
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マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ 著者:レイダル イェンソン |
本書の著者、レイダル・イェンソンは、スウェーデンに生まれ、現在(1989年度版での記載)は、南フランスに在住している。『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』は、彼の7作目の作品である。これが、日本で初の翻訳となる。
本作は、1985年に映画化され、各国にて絶賛されているので、映画のほうを観た方もおられるであろう。私も観たが、先に原作を読んでいたので、やはり、活字のもたらす、イマジネーションを超えることはできなかったと思う。
しかし、映画は映画で素晴らしい出来であるのは、間違いないので、小説を読む時間が取れない方は、映画を観ることをお勧めする。主人公の少年の演技は、侮れないものであるし、脚本、監督、演出も相当の出来である。
小説のほうは、「1959年」と「1958年」を章ごとに、行ったり来たりする構成である。読み始めは、その構成に、多少、混乱することもあるだろうが、作者の意図を汲み取れる仕組みであるから、そのうちに慣れるし、また、それに慣れなければ本書の魅力は半減してしまうから、いずれにしろ、構成を気にすることはさほどないであろう。
なぜなら、小説とは、読者が半分は作者なのであるから。つまり、小説を読むということは、作者と読者との協働なのである。とすると、無理にその小説を読むことは、可能なこととはいえないであろう。
本書は、イングマルという少年が主人公の、一人称小説である。つまり、イングマルという少年が、「ぼく」として語っていくのである。
たとえば、愛犬のことを、ママのことを、友だちのことを。
あまり、詳細にここでいうと、いわゆる「ネタバレ」となってしまうから、概説にとどめておこう。
本書の、通奏低音は、「悲哀」であるが、語り口は、軽妙でユーモラスですらある。
しかし、その通奏低音は、クライマックスにかけて、徐々にたかまり、最後には、それが悲しい哀しい歌であることを、読者は知ることになる。
私は、結末まで、作者と協働した後、ふたたび作者と初めに戻り、共働したくちである。
ところで、小説に限らず、本というものは、あらすじを書くと、それがまるでつまらないものに思えてしまう。学術書ならまだしも、小説というものはそうである。小説というものは、話がどうのこうのということよりも、語り口を味わったり、あたかも音楽を聴くように身体で楽しむものであったりするものであるからだと、私は思う。
本書は、構成が多少、凝ったつくりであるにしても、やはり、あらすじだけ書けば、それはつまらないものとなるであろう。
小説の主題というものは、それほど重要なものではないのである。小説にとってもっとも重要なものは、「ヴォイス」である。読者と共に歌う、「ヴォイス」である。
私は、本書で、おおいに共に歌わせてもらった。それが、悲しい、哀しい歌であったとしても。
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