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日本国憲法にすがりつく人々 太田光・中沢新一:『憲法九条を世界遺産に』を手元に置きながら

 私は、日本国憲法を、いわゆる素読するときによく思うのだが、それは、この憲法のどこが素晴らしい憲法なのか、また、いったい何の役に立つのかということである。法律実務レヴェルでいえば、憲法は伝家の宝刀である。しかし、その伝家の宝刀は、脆く、まったくといっていいほど役に立たないものである。最高裁判所での違憲判決など数件だけである。憲法訴訟など起こすだけ無駄なのである。名誉のために起こすのならば、違憲判決が出るかどうかなど関係ないのだろうが、日本国最高の詭弁家たちの集まりである最高裁判所による伝家の宝刀により斬られるのがおちである。

 それでも日本国憲法にすがりつく人々がいる。強いていえば、いわゆる平和主義にである。日本国憲法はよく平和憲法といわれる。憲法学者もよくそういう。私も素読したり、憲法学者の学術書などを読めばそう言わざるを得ない。日本国憲法は平和憲法である。そして、日本国憲法は、各国の憲法の善いところを集約した憲法でもある。平和憲法というだけでなく、およそ憲法というものの持つ善さを極限にまで圧縮した、また、濃縮した憲法である。すがりつく人々がいるのも無理もない。

 私は、このような人々を糾弾する意図はさらさらないが、そこにある種の原理主義がみえるのはたしかである。私が、そのようないわゆる護憲派の方たちに対して、「日本国憲法は異常な憲法だ」というような発言を少しでもしようものならば、人間扱いされないからである。これは、憲法にすがりつく護憲派の方々の最大の矛盾である。言論弾圧であるからである。日本国憲法には、言論の自由(憲21条Ⅰ)も保障されているにもかかわらずである。しかし、これは憲法学者も憲法に対するいわば苦言には、言論弾圧を加えてくるので、あまり責めることはできない。憲法を解釈できるのは、おおよそ法律実務家と学者だけである。その他の者は勝手に解釈することはできない。たとえできても、無視されるだけである。評論家が憲法解釈を試みているが、それは試みているに過ぎないのである。最高裁判所には何にも影響など与えない。

 「9条の会」なるものも何の影響も与えない。一般市民を啓蒙することくらいならばできるのだろうが、私にいわせれば、あまりうまい啓蒙とはいえない。なぜならば、一般市民は平和主義や基本的人権や国民主権や言論の自由の行使などを憲法の観点から考えはしないからである。一般市民は、犯罪者を死刑にする方に興味・関心があるのである。あるいは金儲けに奔走しているのである。

 日本国憲法にすがりつく護憲派の方々は、概して、知的レヴェルが高く、教養が好きで、生活にゆとりがある者が多い。これは、進歩的文化人や学者や市民団体員や、『憲法九条を世界遺産に』という対談本を出した、お笑い芸人の爆笑問題の太田光殿のことである。現在、私の手元にはその本があるが、読んでみるとなかなか良い本である。しかし、やはり現実から乖離した場所での議論に私はもはや興味が持てない。私自身、憲法改正には反対である。それは、日本国憲法がいい憲法であるからではなくて、改正する者に委ねることを危惧しているからである。おそらく、まともな改正はできないだろうからである。

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著者:太田 光,中沢 新一
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